ことばdiary

特別支援教諭を辞める小1の母

障害のあるお子さんが被災したら

こんにちは、kinosatoeです。

 

一昨日は特別支援学校の避難訓練について書きました。

今日は、学校に限らず、例えば避難所で過ごすなど被災してしまった時のことを考えてみます。

 

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知的障害のあるお子さんが避難する際、不安材料となる点はいくつかあります。

それらの詳細や、周囲ができること、本人が付けておきたい力など…

対策?となるかは分かりませんが、書いてみます。

 

 

一つ目は

【多動、衝動性、不注意、こだわりなどから、安全に外を歩いて避難することができるか】

避難経路がどんな道かによりますが、気になることがたくさんあったり、こだわりがあったりして、スムーズに経路通りに歩けるとは限りません。

 

ご家庭としてできることは、日頃から家の周りを歩いておくことかと思います。

どこか危険そうか?お子さんがどこが好き/怖いか知っておくこと。

 

そして学校では、例えば

「外を歩くときはかならず手を繋ぐ」とか

「行きたい所があっても我慢して、決められた道で目的地まで歩く」とか

「先生や友だちと、集団で歩く」とか

そういった意識をもたせることと、実際にできるように練習する必要があると思います。

 

ご家庭の話に戻りますが、できるのであれば、日頃からご近所さんや地域の方にお子さんのことを知っていてもらうことは、非常に重要なことです。

 

避難する際に、安全確保の補助をしてもらえるかもしれない。

親御さんがお子さんに集中できるよう、荷物を持ってくれるかもしれない。

…そんな可能性が考えられます。

 

 

 

不安な点 二つ目です。

【避難所で落ち着いて過ごすことができるか】

初めての場所、いつもと違うルーティン、人がたくさんいてざわざわした空間、音やにおいの刺激など…

障害がなくても避難所生活はとても厳しいものですが、障害特性としてや、感覚的に人一倍辛い思いをする可能性があります。

 

そして、それを言語や身振りで周りに伝えることも、難しいお子さんは多いと思います。

 

 

では、そんな状況で、あるといいな…と思う配慮や、お子さん自身の力とは。

 

・安心できる居場所の確保

例えばお気に入りの毛布、クッションやイス…など、「この場所にいればOK」と思える、居場所の目安となる何かがあるといいかと思います。

多動のお子さんは、あちこち動き回りたい・動いてしまう様子が見られますが、「ココだよ」という居場所としての対象物があると、その場に留まりやすいと思います。

それが、お気に入りだったり、普段の生活で使っている物だったりすると理想ですね。

 

・感覚過敏への配慮

ざわざわした空間が苦手なお子さんは多いと思います。可能であれば、出入り口の近くや隅っこ、音が反響しにくい所など…でしょうか。

(多動や衝動性が強いお子さんは、出入り口付近だと飛び出しの危険⚠️もありますので、一概には言えませんが)

 

また過敏ではないですが…

体温調節が難しく、特に熱がこもりやすいお子さんはとても多いです。

熱中症の危険性も高いですし、身体面の不快から他害や自傷が出てしまうこともあります。

 

 

お子さん自身としては、苦手な刺激を軽減するグッズを持っておくといいと思います。

イヤーマフといって、ヘッドフォン🎧のような物を持ったり常に着けたりしているお子さんもいます。

 

家庭では特に問題がなくても、学校など集団に入ると、周囲の音が原因で活動に支障が出るということはよくあります。

 

学校で試着したり、先生から打診されることもあるかもしれません。

常に必要でなくても、「うるさくて嫌な時は着ける」状況があるようなら、是非ひとつ持っておくといいかな、と私は思います。

 

災害時に限らず、テーマパークやゲームセンターで、イヤーマフのおかげで楽しめた!というお子さんもいらっしゃいますよ(^^)

 

 

続いては

・好きなこと(余暇)  を持つこと。

興味関心の幅が限定されていて、好きなことや楽しめることが少ない、というお子さんは結構います。

 

決められた工程をその通りにこなすことが得意なお子さんも多く、「いつも通り」であることで落ち着いて過ごせるのですが、

「休み時間だよ、好きなことしよう」となると、これと言って好きなおもちゃや遊びもなく、教室内を歩き回ったり外に出ようとしたりしてしまうのです。

 

なので、例えばおもちゃ、絵本、ビーズ遊び。タブレットなどでもいいです。

 

避難所での時間を過ごす術として、好きなこと、楽しめることをなるべくたくさん持っておくといいと思います。

 

災害時、好きなことが思うようにできないことは想定されますが、お子さんの好みが分かっていれば、工夫できることもあると思います。

 

学校でも、興味関心の幅を広げるために、さまざまな物事を経験できるよう意識しています(^^)

 

 

最後は、

・状況を視覚的に分かるようにすること。

 

例えば、家になぜ帰れないのか?

道が崩れたり家の中が散らかって危険なことを画像などで示す。

 

いつまでここにいるのか?を、カレンダーを使って示す。

 

今日することを、手順表や画像で順に示す。

…などでしょうか。

 

他にも、何か食べたい?とか、暑い寒い?とかの質問も、口頭だけでは分かりにくかったり答えることが難しかったりします。

視覚的に分かるように、実物を示して尋ねることも有効だと思います。

 

「分からない不安」を取り除くため、視覚的な手法を用いることは重要かと思います。

 

 

 

二つ目が長くなりました。

三つ目の不安は、

【非常食が食べられるかどうか】です。

 

健康状態に直結する問題ですね…

 

ご家庭でも学校でも、偏食の課題があるお子さんは多く、どんな苦手さがあるかは様々です。

・野菜全般食べられない

・白ごはんはダメ(ふりかけや海苔が必要)

・白ごはんしか食べない

・具材が混ざっていると食べられない

・何の食材か分からないから食べられない

・特定の食感のものは食べられない

・決まった食器じゃないと食べたくない

・熱さ、冷たさが理由で食べられない

・初めてのものは食べられない

 

…などでしょうか。

 

好き嫌いの問題だけではなく、味覚や嗅覚、温度、認知面など、お子さん本人も困っている要因があって、偏食になってしまっていることがあります。

 

非常食は、種類も豊富になり味もどんどん美味しくなっているとはいえ、普段食べ慣れていないもの、であることには変わりないかと思います。

 

なので、ご家庭で非常食を用意される場合は、好みに合わせるのはもちろん、時々食べて慣れておくといいかと思います。

パッケージも見慣れておくと、「これは好きな食べ物!」と安心できるかと思います。

 

また、避難所では、支援物資として非常食ではない食品が届くこともあるかと思います。

お子さんが見慣れている、食べ慣れている、食べ物が手元に届くといいな…と願います。

 

 

学校としてできることは、

苦手なものを減らすこと、だと考えています。

 

完食できれば花丸ではありますが、無理して、辛い思いをして、食べることが嫌になって、完食する必要はないです。

 

お子さんの実態に合わせて、

ほんの一粒だけ頑張ろう!と、葛藤しながら一粒食べる子もいれば、

好きなものと交互だよ、と交渉しながら苦手な物も食べる子もいます。

 

噛まずに出してもいいから口の中に入れてみよう、という段階から取り組むお子さんもいます。

 

苦手だけど頑張れた!と本人が自信をもてたり、

褒められて嬉しいと思えたり、

頑張った分のご褒美があったり、

 

お子さん本人が頑張ろうと思える支援をして、少しずつ少しずつ慣れることを目指します。

 

でも、

口に入れることすら嫌なのに…無理強いなのでは、と感じられるかもしれません。

ですが、不思議なことにすっごく嫌がってたお子さんでも、ずーーーっと状況が変わらない、ということはないんです。

 

食べてみたら大丈夫だった、とか

だんだん美味しくなってきた、とか

食全般の抵抗感が減った、とか

 

入学当時のまま1年生を終えるお子さんに、私は今のところ出会ったことがありません。 

 

ご家庭では難しくても、学校だとやりやすいことは、「きっかけ作り」だと思います。

環境が変わること、新しい先生に出会うこと、自分と同じように頑張っている友だちに出会うことで、変化が生まれやすいのだと思います。

 

 

…非常食の話のはずが、偏食の取り組みの話が長くなってしまいました。

すみません。

 

被災・避難所生活という過酷な状況では、空腹でないこと、好きなものが口に入ることが、心と体の健康を支えると思いますので、しっかり備えておきたいと思います。

 

 

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【多動、衝動性、不注意、こだわりなどから、安全に外を歩いて避難することができるか】

【避難所で落ち着いて過ごすことができるか】

【非常食が食べられるかどうか】

 

の三つの不安について書きました。

細かく考えれば、もっと様々な不安があるとは思います…

でも、障害のあるお子さんには不安だらけ、というわけではありません。

 

状況判断に長けている子もいるし、

安全に過ごせる子もいるし、

自分のことより家族のことを心配して過ごす子もいると思います。

 

障害特性ゆえに、周囲の人が気付きにくいこともあるけれど、お子さんの内面にはたくさんの思いや頑張りが詰まっています。

それらを信じつつ、困難さがあることに配慮して、必要な時はいつでも手を差し伸べられる環境であるといいな…と願います。

 

被災地で頑張っている皆さんへ、お見舞い申し上げます。

心と体が休まりますように。

 

 

お読みいただきありがとうございました。